この夏に公開されて話題となり、現在も全国公開中の劇場映画「時をかける少女」が、シッチェス国際映画祭最優秀長編アニメーション賞に続き、第11回アニメーション神戸作品賞・劇場部門を受賞した。
「時をかける少女」は、日本SF界の巨匠、筒井康隆の名作を初めてアニメーション映画化した作品。物語は原作の続編的な2006年を舞台とした内容となっており、原作の主人公だった芳山和子は、ちょっと謎めいた真琴の叔母として登場する。
ごく普通の女子高生「紺野真琴」は、あるきっかけから「今」から過去に遡ってやり直せる力、タイムリープの能力を身につける。力の使い方をマスターした真琴は、何のためらいもなく日常の些細な不満や欲望の解消に、この力を使ってしまう。バラ色の日々を送るある日、真琴はクラスメートの男子生徒で親友の間宮千昭より思わぬ告白を受け、思わずタイムリープでその告白をなかったことにしてしまう。ところが今度は同級生の友梨が千昭に告白し、千昭もまんざらでもなさそうな様子。真琴にとっては、ついさっき告白してきた相手が別の女の子と仲良くしているのを見て、面白いわけがない。さらに追い打ちをかけるように、もうひとりの男友だち、津田功介にあこがれる下級生・果穂から、恋の相談をもちかけられてしまう。
千昭と功介、そして真琴。いつまでも3人の友だち関係が続くと思っていた真琴の望みは、タイムリープでさらにややこしくなってしまう。「つきあっちゃえばいいのに」という真琴の叔母、和子のアドバイスをよそに、真琴は果穂の恋を成就させるべく、さらにタイムリープを繰り返すのだが……。
スペインで開催された第39回シッチェス国際映画祭は、エンターテイメント性と作家性を兼ね備えたファンタジー作品を重視した歴史ある映画祭で、こちらでは最優秀長編アニメーション賞を受賞。いっぽうのアニメーション神戸とは、神戸市主催のデジタルコンテンツの振興や映像制作に携わる人材の発掘・育成を図るイベントで、「アニメーション神戸賞」は国内の商用アニメーションを対象に、世界的に評価が高く、将来の活躍が期待できる個人・団体・作品などに与えられる賞となっている。そしてこちらでも「時をかける少女」は劇場部門・作品賞を受賞した。
シッチェス国際映画祭最優秀長編アニメーション賞受賞にあたり、細田守監督は「遠くスペインの地で好意的な御評価をいただいたと聞き、感無量です。映画作りを支えてくれた多くのスタッフと、劇場に足を運んでいただいた多くの皆さんに感謝します。」とコメント。角川書店・渡邊隆史プロデューサーも、「小さくても愛される作品を、との思いで制作した映画がこのような形で評価されたことは大変うれしい。特に制作会社のマッドハウスによる、真摯な制作姿勢による作品の良さが評価された結果だと思う。スタッフと、作品を支持していただいた多くの方々に、深く感謝します。」と語った。
また、この朗報に原作者である筒井康隆も、「時間も、国境も、人種も超えて愛される強さがこの孝行娘には備わっているという証だろう。細田君、おめでとう」との言葉を寄せた。
さらにアニメーション神戸賞については、審査委員である徳間書店「アニメージュ」統括プロデューサー大野修一より下記のコメントが寄せられている。
「この1年でもっとも観客に愛された映画『時をかける少女』。人々はなぜそれほど『時かけ』に惹かれたのでしょうか。美術や動きや声の魅力もさることながら、その答は主人公の変化にあるように思えます。取りかえしのつかないことというのは、昔から世の中にたくさんあります。しかし、現代の私たちは個人としてそれを体験する前に、無数の用例を〈情報〉として知らされてしまい、その結果、臆病になるか、逆に無神経にしかふるまえなくなってしまっています。紺野真琴は、タイムリープという能力を手に入れた当初は「取りかえしがつく」ことに浮かれはしゃいでいますが、経験を重ねるにつれ、「取りかえしがつかない」現実と出会い、どう逃げないようにするかを考えはじめます。表面的なハッピーエンドではなく、〈決意〉の物語へと至ったところに、この作品の魅力はあるのではないでしょうか」。
現在もまだロングラン上映中の「時をかける少女」。年内いっぱいの公開をにらみつつ、年末・年始の国内映画賞にも期待が高まっている。なお、現在公開中の劇場については、公式サイトより確認できる。
●「時をかける少女」公式サイト